子育てのための医療 | ならざき小児科

福岡市東区和白 医療法人育慈会 ならざき小児科

子育てのための医療

  • 子育てのための医療の記事一覧

くまさんによる「親子の生活習慣を見直そう」

img0
初代くまさんによる「親子の生活習慣を見直そう」。

こどもだけではなく、おとなの生活習慣を直すことも重要です!

ぜひ、一度ご覧ください。

こちらから全文をご覧いただけます!(PDF)

子どもを勇気づける言葉かけ

(4月から高校教師として歩み始めた子寅からの寄稿)

 「『君には無理だよ』という人の言うことを聞いてはいけない。決して諦めては駄目だ。自分のまわりをエネルギッシュでしっかりした考え方を持っている人でかためなさい。プラス思考の人でかためなさい。近くに誰か憧れる人がいたら その人にアドバイスを求めなさい。君の人生を考えることが出来るのは君だけだ、君の夢がなんであれ、それに向かっていくんだ。何故なら、君は幸せになる為に生まれてきたんだ」
 元プロバスケットボール選手であるマジック・ジョンソンの言葉です。読んでいて、やる気や勇気が湧いてくるような気がします。

 これとは対照的な、こんな言葉をこどもに投げかけてはいませんか。
「朝なんだからさっさとしなさい!」、「夜遅くまで起きているから・・・」、「テレビなんか見てないで宿題をしなさい!」、「だから勉強ができないのよ」 などなど・・・
 では普通に朝起きて学校に行き、宿題を終わらせてテレビをおとなしく見ているときはどんな言葉かけをしていますか。当たり前と思って何も言わないままにしていませんか。

 アドラー心理学の「勇気づけ」が近ごろ教育界で注目されています。アルフレッド・アドラー(1870 – 1937)は人の持つ劣等感を重視しました。心の発達はこの劣等感の克服にあると考えました。アドラーによれば、勇気をくじき、劣等感を生じるような言葉は、心の発達を阻害します。こどもにはなるべく、勇気を与えるような言葉かけ、すなわち勇気づけを行うのが望ましいのです。
 勇気づけの第一歩は適切な行動を当たり前と思わずに勇気づけのきっかけにすることです。
 子どもが朝寝坊せずに起きてきたら、「おはよう、元気に起きてきたのね、お母さんも気持ちいいなあ」。食事の時、ダラダラ食いの子どもがきちんと食べてくれたら、「ごはんをおいしそうに食べてくれてお母さんうれしいなあ」。他にも、兄弟げんかもせずテレビを見ている、お風呂に入った、など当たり前の行動に注目・関心を向けると、このような言葉がすんなり出てきます。

 同時に、こどもの欠点は長所の裏返しであることにも気づくはずです。落ち着きのないこどもは見方を変えれば、好奇心が旺盛です。のんびりしたこどもは、何をするにも丁寧でおだやかであるというよいところがあります。
 このように別の角度から見ることを「リフレーミング」といいます。リフレーミングを行うと、こどものよいところを見つけることが楽しくなってきます。

 では、問題行動や不適切な行動に対して、勇気をくじかないように、どういう言葉かけをすればよいのでしょうか。アドラー心理学は不適切な行動に対してまずは無視する方略をとります。もちろん、その子の人格を無視するのではなく、不適切な行動だけをさりげなく無視します。その代わり、その子の適切な行動については大いに認め勇気づけをするのです。これを「選択的注目」といいます。

 それでもやっぱりこどもの不適切な行動を注意したいときはありますよね。そんなときは「I(アイ)メッセージ」という話方を用います。Iメッセージと比較される話方が「YOU(ユー)メッセージ」です。
「あなたはがんばらなければならない」「あなたはどうしていつもそうなの?」「お前というやつは!」などがYOUメッセージになります。Iメッセージは次のように作ります。

  1)「When~のとき」で起きていることを言い、
  2)「I feel~と感じる」で自分の気持ちを伝え、
  3)「Becauseなぜなら~」でなぜ自分がそう感じたかを説明します。

「1)君が家の中でボール遊びをすると、2)お母さんは困るなあ、3)なぜならガラスが割れてお家がこわれちゃうから」。この場合、続けて選択肢を与えることも有効な手段となるでしょう。「ボール投げは外でするんだよ。家の中で遊ぶんだったら別のことをしようね。どっちにする?」。

 アドラー心理学を通して子どもを勇気づける言葉かけについて考えてきましたが、その根本は大人が自分自身のあるがままを受け容れ、一人の人間として大切にするという点に還元される気がします。大人が自分を肯定的に受け容れてこそ、子どもを肯定的に見ることができ、勇気づけることができるのではないでしょうか。
 子どもを勇気づけられる親となり、子どもにとってのマジック・ジョンソンになってあげたいものですね。

(子寅2010年3月15日)

クマさんの、急患センター受診の心得~小児救急を守ろう~

<クマ院長が残した最後の資料に基づいてまとめた原稿です>

 小児救急医療が崩壊の危機に瀕しているというのはすでに皆様が知っている事実です。
 原因の一つに医師不足が挙げられています。厚生労働省の統計分析によると、日本の現在の医療体制を維持するには約4万人の医師が不足しています。診療科でみると、産婦人科と小児科が特に不足しているようです。しかも、少なくともこういう状態になってから、すでに10数年も経ってます。救急車の搬送先がなく患者さんが死亡する事件が報道されて、こういう医療現場の深刻で不健全な状態が世間の皆様の知るところとなったのはつい最近のことです。
 もう一つの原因としては、時間外の小児救急に訪れる患者は増加の一途であり、医師不足に加えて小児科医が疲弊し、小児救急をやめる病院が増えているというところにもあります。
 小児救急の体制は自治体によって様々な運営形態があります。例えば北九州の場合、拠点病院に勤務小児科医を集約し救急診療と重症患者の入院受け入れが一体となっています。福岡市の場合、福岡市から医師会に委託し、医師会が急患診療センターと各区の保健所にある急患診療所を運営しています。専任の医師はいません。開業している医師や病院に勤務している医師が当番で急患診療に出務しているのです。当番で出務している医師や検査技師、薬剤師らは、それぞれの本来の仕事を終えた後に駆けつけ、深夜まであるいは朝まで仕事をしています。翌日にはまたそのままそれぞれの本来の仕事をしているというのが現状です。また、センターには入院設備がなく、重症患者は入院できる病院を探し搬送するというシステムです。
 夜間・休日に多くの患者が急患診療に集まっているために、待ち時間が長く、容態の悪い患者を待たせることにもなりますし、従事しているスタッフも仕事量が多すぎて疲労困憊しています。お互いにいらいら状態で感謝と思いやりの気持ちが持てず、現場はストレスばかりが増殖しているような状態です。
 各種の調査から急患診療に集まっている患者は、必ずしも急患でない不要不急の軽症患者もたくさん含まれているのが判ってきました。例えば、何日も前から症状があったのに保護者が昼間仕事で受診できず、薬がなくなったので、かかりつけにかかったが何となく心配だったので、などの理由で訪れています。中には急患センターがかかりつけという保護者もいるようです。国がこういう軽症患者に対する対策を検討し始めていると伝えていました。必要なことだと思います。
 放置せずに急患診療を必ず受診すべき症状として、呼吸が苦しい時、顔色や唇の色が悪い時、意識がない時・おかしい時、けいれんが起こった時(短時間でおさまり意識もすぐに戻った場合は例外)、嘔吐が何度も続く時、生後3か月までの発熱などです。
 受診の目安がわからない時には、日本小児科学会の「こどもの救急」ホームページを参考にしてください。または、小児救急電話相談の利用もお薦めです。
 小児救急医療の崩壊を止める国の政策ももちろん大事ですが、それと同じくらい我々一人ひとりの行動で小児救急医療を守ることも大切です。急患センターを正しく利用しましょう!そしてできればスタッフに感謝の気持ちを持ちましょう。医療者の使命と考え、昼間の診療で疲れた体に鞭を打って、病気のこどもたちのためにという心の支えでがんばっているのです。あなたの感謝の一言が医療者に充実感を与え、仕事への情熱をかきたててくれるのです。(平成21年9月14日)

受診の目安がわからない時は?
日本小児科学会「こどもの救急」ホームページ
   http://www.kodomo-qq.jp/
小児救急電話相談:看護師または医師が相談に乗ってくれる(19時~24時)
   電話:#8000(プッシュ式電話から)
   電話:092-725-2540 (ダイヤル電話と携帯電話から)

急患センターは正しく利用しましょう
急患センターはコンビニではありません
不要不急の受診はやめましょう
解熱剤は常備しておきましょう
気管支喘息のこどもさんは、喘息薬を常備しておきましょう
早く診てもらえるからという理由で、救急車を利用するのはやめましょう

クマさんの、福岡市の小児医療体制を考える

 福岡市東区では、2006年に和白病院、今年は千早病院で小児科がなくなりました。九大病院は喘息や肺炎で入院というわけにはいかないので、人口28万人の東区に小児科病床は実質ゼロという状態です。そのため、当院では入院が必要なお子さんには古賀市の国立東医療センターか中央区の福岡市立こども病院を勧めますが、自宅と病院との往来を考えてほとんどのお母さん方は東医療センターへの入院を希望されます。しかし、東医療センターはベッド数が十分ではなく、重症者は受け入れてもらいにくい。また、救急車で患者さんを搬送する時、救急隊は福岡市外への搬送を嫌がるという事情もあります。
 福岡市内には、第1グループとして九大病院(東区)、福大病院(城南区)、こども病院(中央区)、国立九州がんセンター(南区)、国立福岡医療センター(南区)が主として特殊な病気を診る専門病院として存在します。小児科医が5人以上いる(しかし10人は超えていない)第2グループは国立九州医療センター(中央区)、福岡赤十字病院(南区)があります。小児科医1〜3人で切り盛りしている第3グループとしては、九州中央病院(南区)、福岡記念病院(早良区)、福岡逓信病院(中央区)、浜の町病院(中央区)、済生会福岡総合病院(中央区)、千鳥橋病院(博多区)がありますが、当然のことながら収容・対応能力は低いことになります。ほかに、福岡市周辺部には国立東医療センター、徳洲会病院(春日市)があり、福岡市内のこどもたちもたくさんお世話になっています。
 このように、福岡都市圏は施設数も小児科医数も多いので決して小児医療の資源不足ではありません。むしろ、専門病院に関しては充実した地域です。問題は、開業医がみる外来患者(一次医療)のうち軽症〜中等症入院(二次医療)を年中無休で引き受けてくれる病院、小児科医が10名以上配置された二次病院がないことです。また、生命の危険がある重症患者を引き受ける小児集中治療室(三次医療)は現在九大病院・福大病院にありますが、福岡都市圏の規模からすれば病床数がもっと必要です。

 欧米では病院数は少ないのですが、1病院あたりの病床数や小児科医数が非常に多く、年中無休で三次医療まで対応できる体制になっているそうです。このような拠点化、集約化は、何よりもこどもたちのためにありがたい体制ですし、スタッフの勤務体制や検査機器など必要経費の面からも合理的な体制です。日本は世界でも有数の車社会ですから、昔ながらの小規模病棟多数配置ではなく、欧米スタイルに早く切り替えていくべきです。国も日本小児科学会もそのように考え、拠点化、集約化を進める方針を数年前に出しています。北九州市では、すでに小児科医10人以上の拠点化病院が2ヶ所あり、救急医療とも連動して小児医療に大きな貢献をしています。隣の熊本県では、県が音頭を取って集約化を着々と進めています。しかしながら、福岡市では小児医療集約化の論議は公には開始されておらず、非常に遅れていると言わざるをえません。

 福岡市でも病院小児科を集約化(第2グループを中核として第3グループを吸収・統合)することが急がれます。その上で、二次医療だけでなく三次医療にも年中無休で対応できる病院を作る必要があるでしょう。こども病院の移転は絶好の機会だと思います。新こども病院が救急医療にも取り組むなら市内に3ヶ所拠点病院ができることになり、一挙に充実した体制になるでしょう。これは福岡市だけでやれることではなく、大学小児科、病院、小児科勤務医が一緒に知恵をしぼって、英断を積み重ねる作業が必要です。
 こどもたちの命や健康を守るために小児医療体制を再構築すべき時期ですが、なかなか動きが出てきません。こども病院開院の時もそうでしたが、市民特にお母さんがたの声がマスコミ・行政・大学を動かしますので、市民運動が立ち上がるのをクマさんは期待しています。協力も惜しみません。

(2008年9月26日)

クマさんの、えっVPDを知らないの?

 前回は、日本が世界有数のワクチン後進国であり、世界標準にはほど遠いワクチンギャップがあることを書きました。また、そうなった原因の一番は国のワクチン行政にあるという話にも触れました。
 今回は、ワクチン・ギャップが生じた原因はお母さん方や僕たち小児科医にもあること、日本にはVPDの考え方を広げる必要性があることを、書きたいと思います。

 日本人は世界的に類を見ない「ワクチン嫌い」の国民という見方もあります。おたふくかぜや水痘は自然にかかった方が良いという考えをもっている人は少なくなく、わが子を患者に接触させて病気をもらいにいくというのは今でも結構よく聞く話です。こんな国は少なくとも先進国では他にはないでしょう。NCCにかかっている韓国人のお母さんが、「他にはもうワクチンで予防できる病気はないんですか?」としばしば質問されるのとは大違いです。

 おたふくかぜも水痘も命取りになることだってあるし、合併症も多い病気です。おたふくかぜでは1000人に1人くらいは難聴が残ってしまいます。世界の常識は、ワクチンで予防できる病気(VPD:vaccine preventable disease)は可能な限りワクチンを接種してかからないようにしてあげる、大切なこども達の命や健康を守る、という考え方です。

 要するに、日本人は感染症やワクチンに対して不勉強なのです。それだけでなく、間違ったワクチン不要論や悪者説まで世間に広く広まっています。マスコミは、ワクチンの有効性について報道することは稀ですが、予防接種裁判のたびにワクチンの副反応を書き立てます。また、ワクチン反対論者の意見をしばしば引用します。僕たち小児科医は、患者さんたちにワクチンの大切さや正しい知識を根気よく説明し続ける努力が足りなかったようです。

 以上のような背景をもつ「日本人のワクチン嫌いあるいは無関心」があるために、世界と比べて20年も遅れているワクチン行政に対して改善を求める世論が巻き起こらないのです。国はそれをいいことに、国民の健康を守るという本来の仕事をさぼっているとも言えます。今回のヒブワクチン不足を契機に、日本のお母さん方が目を覚ましてくれればいいんだがな、とクマさんは思っています。

 ワクチンで予防できる病気は完膚なきまで叩きつぶそうとするのが先進国のスタンスです。開発途上国でさえ、将来の国を担うこどもたちのために、乏しい国家予算から捻出して積極的にワクチン接種を勧めているのです。このワクチン・ギャップを早く解消するためには、日本のお母さん方にVPDの考え方が広まることが絶対に必要です。おかあさん、まず”Know VPD!”の ホームページを見て、意識改革を始めましょう(VPDで検索すれば一番最初に出てきます)。

(2009年8月14日)

クマさんの、ワクチン・ギャップの話

 日本は世界に冠たる経済大国で、とても豊かな国ですが、発展途上国にも負けている分野があります。それも、国民の命や健康に直結する分野です。何だと思いますか?それは予防接種です。

 昨年12月にやっとヒブワクチンが導入されましたが、まだ任意接種です。世界でも最も導入が遅いグループです。他の先進国では10年以上前から定期接種化されています。韓国・台湾では任意接種ですが、接種率はそれぞれ90%、70%です。B型肝炎ワクチンは、1992年WHO(世界保健機構)がすべての新生児に接種するよう勧告し、現在では大半の国で実施されています。WHOの予防接種戦略では2009年までに世界のすべての国で定期接種化するという目標を立てていますが、日本ではそのような話はまったく聞こえてきません。

 アメリカのこども達が定期接種で受けているのに、日本では受けられない(国に認可されていない)ワクチンとしては、肺炎球菌ワクチン、不活化ポリオワクチン(副作用の頻度が少ない注射ワクチン)、麻疹・おたふくかぜ・風疹混合ワクチン、ロタウィルスワクチンがあげられます。また定期接種化されていないために接種率が著しく低いワクチンとしては、B型肝炎ワクチン、ヒブワクチン、インフルエンザワクチン、水痘ワクチン、A型肝炎ワクチンがあります。

 このように日本の予防接種体制が世界標準から大きく遅れている現状は、ワクチン・ギャップと呼ばれていますが、どうしてこのようなギャップが生じたのでしょうか?

 最大の原因は国の予防接種行政です。国民の命や健康を守るための仕事が本分なのに、その視点が完全に欠落していると言わざるをえません。本来、ワクチンは感染症を予防するために非常に有効な手段で安全性も保証されているが、薬に副作用が起こることもあるように、極めて稀な確率で副反応が起こることは避けられません。そのため、万が一そのようなことが起こった時には、被害者を救済する制度がちゃんと用意されています。しかしながら厚労省は、極めて稀に起こるワクチン接種後の(ワクチンの副反応が否定できない)有害事象による裁判を数々経験したため、ワクチンに関する正しい知識を国民に普及させる道よりも、裁判を回避する道を選択しています。WHOから良いワクチンだと評価された従来の日本脳炎ワクチンを事実上中止してしまったことからも分かるように、訴訟リスクを軽減するために安全性の保証度をできるだけ高くしたいわけです。となると、新たなワクチンの導入は非常にハードルが高く、認可までの時間もかかることになります。

 しかし、このままでは日本は世界一のワクチン後進国になってしまいます。国は積極的に新しいワクチンを導入し、接種費用の公費負担も拡大すべきです。国民にはワクチン接種を勧める広報を徹底して、各種のワクチン接種率を向上させるべきです。それが、国民の命や健康を守ることになり、ひいては医療費抑制にもつながるのですから、一石二鳥のはずです。国民の命や健康を守るという自分たちの立ち位置を思い出して、ワクチン行政をしっかりやってほしいものです。

 クマさんは、ワクチン・ギャップが生じた原因はお母さん方や僕たち小児科医にもあると思っていますが、その辺は次回に書きます。

(2009年8月13日)

クマさんの、新型インフルエンザの教訓

 とうとう新型インフルエンザが出現しましたね。日本の政府もマスコミも大騒ぎでしたが、新型インフルエンザは弱毒性の豚型H1N1インフルエンザでした。予想されていた強毒性の鶏型H5N1インフルエンザではなかったため、人的被害が少なくて良かったですね。しかし、この豚型も秋以後の第2波の流行時には毒性が増しているかもしれないし、鶏型だって着々とヒトへの感染能力を身につけている最中であることには何ら変わりはありません。したがって、この次のアウトブレイク(流行)が今回のように軽くすむという保証はまったくありません。

 さて今回は、今度の新型インフルエンザから学んだことをまとめてみましょう。まず第1番目は、やっぱり感染症との戦いに終りはないということ。新型インフルエンザの登場は時間の問題だと、専門家の間ではだいぶ前から言われていました。人類の病気の歴史から見ればきわめて当たり前の現象なのです。ヒトがワクチンや薬を開発しても、病原体は進化して生き残ろうとする。タミフル・リレンザもワクチンも効果は一時的と思われ、新しい薬やワクチンを開発してもインフルエンザ・ウィルスも負けずに変異するので、イタチごっこで終りがない。新型インフルエンザの出現は、これからもずっとくり返されるでしょう。

 2番目はワクチンです。今回出現した新型インフルエンザ・ウィルスはすでに分離されていますが、これを用いて早急にワクチンを作り流行の第2波に備える必要があります。実際にその作業はすでに始まっていると思われますが、従来のインフルエンザだってもちろん流行しますので、新型、季節性の両方のインフルエンザ・ワクチンを製造しなければなりません。ワクチンを作るためには鶏の有精卵が必要ですから、生産量を一気に倍増するのは困難でしょう。実はいつも十分量のワクチンを製造できる態勢を維持しておくことは、新型インフルエンザの流行に対する重要な防衛戦略なのです。そのためには、多くの国民が毎年ワクチンを接種することによって、ワクチン製造ラインという社会的インフラの維持を図らなければなりません。

 3番目は感染防止対策です。手洗いやうがいの励行、マスク着用、人ごみに行かない、集会をしない。こういう注意が、テレビや新聞で何度もくり返し報道されていました。もちろん大切なことなのですが、考えても見てください。これらは新型インフルエンザが出現したからやるべきことなのでしょうか?毎年冬に、インフルエンザの流行に備えて言われてきたことばっかりです。何も目新しいことではありません。また感染症にかかっている時には感染を拡大しないために登校しない。感染症が多い時には、狭いスペースに人がたくさん集まるような行事をしない。これもきわめて当たり前の話です。でも、感染症にかからない、蔓延させないために有効な手段はこういう方法しかありません。新型インフルエンザの流行が終息しても、手洗い、うがい、エチケットとしてのマスク着用は続けましょう。感染力の強い病気にかかった場合は、医師の指示に従ってちゃんと学校は休ませてください。報道キャンペーンで多くの人たちが感染症防止の方法を真剣に学んだことは、今回の騒動で得られた大きな収穫かもしれません。

 日本では皆勤賞狙いのこどもや保護者が新型インフルエンザ流行を拡大させてしまう可能性が、他の国にはないリスク要因になるかもね、なんて要らぬ心配もしてしまったクマさんでした。
(2009年5月31日)

クマさんの、ドタキャンしないで!

 病児保育は、病気にかかっているあるいはまだ病気の回復期にあるこどもさんを預かって世話をするという、ご両親が働いておられるお子さんのための制度です。一度でも利用していただいたお母さん方には、当院の病児保育室「ぞうさんの家」は安心してお子さんを預けられると大変好評です。

 ぞうさんの家は保育士3〜4名で運営していますが、保育室内での感染を防ぎながら質の高い保育をすることを理念としていますので、最大8名までしかお子さんを預かることができません。したがって、この定員をオーバーした場合には、キャンセル待ちをしていただいたり、時にはぞうさんの家のご利用をあきらめていただき他の病児保育室を紹介することもあります。そのため、インフルエンザの流行期など利用希望者が多い時には、1名分の枠が大変貴重なものになります。

 ですから、病気の経過が良くなった、家でお子さんをみられるようになった、などの理由で病児保育の必要がなくなった場合には、急いでご連絡をいただきたいのです。8時半くらいまでにご連絡をいただければ、すぐにキャンセル待ちのお子さんに連絡して受け入れることができますので、お子さんもそのご両親も助かります。なんの連絡もいただけない場合にはスタッフから問い合わせの電話をしますが、それに応答されなかったりすると、1名分の枠を無駄にしてしまうことになります。せっかく利用できるチャンスがあった1組の親子に迷惑をかけることになるわけです。こんなことがあった日には、朝からスタッフみんなの気分が沈んでしまいます。

 このような腹立たしくて悲しいドタキャンを防ぐため、キャンセル料徴収を試みた病児保育室があり、病児保育研究大会で報告されていました。その結果、キャンセルが著しく減ったそうですが、あまりにも寂しい話です。お金を取るのは簡単なことですが、ぞうさんの家ではそんなことまでしたくはありません。本来、この病児保育は助け合い精神から生まれたものです。保育園を休まざるをえなくなった時に困るのはどこの家庭も同じはずです。必要がなくなった枠は、すぐに他のお子さんに譲ってあげてください。自分がその立場であれば、そうして欲しいに決まっています。たった1本、わずか20〜30秒ですむ電話が他のこどもさん、お母さんには貴重なプレゼントなのです。

 ぞうさんの家は最良の病児保育を提供することをお約束します。利用するご家庭も最低限のルールは守って、お互いに助け合いましょうね。ほかのお子さんにとってドタキャンが大変迷惑なのは、病児保育だけでなく、診療予約もまったく同じなんですけどね・・・

(2009年3月31日)

クマさんの、チャーリー永谷ってどんな人?

 ことし8月、NCCは開院10周年を迎えます。理想の小児科クリニック作りに猪突猛進、あっという間の10年間でした。節目の記念事業として、2回目の子育て支援ふれあいコンサートを行います。日頃コンサートに行きたくても行けない子育て中のお母さんや、会場に入れてもらえないこどもたちのためのコンサートです。日時は8月9日(日曜日)午後2時〜4時、場所はコミセンわじろ多目的ホール。
 1回目と同様、クマさんが前座を務め30分くらい子育てや生き方に関した話をします。コンサートはカントリー・ミュージックの大御所「チャーリー永谷とキャノンボールズ」にお願いしています。みんなでカントリーダンスを踊って楽しく過ごしましょう。
 
 クマさんが初めてチャーリーさんに会ったのは、もう15年くらい前のことです。熊本でテニス合宿をした時、友人がチャーリーさんのライブハウス「グッタイム・チャーリー」に連れていってくれました。その頃、クマさんはカントリーもよく聞いていたし、福岡のライブ・ハウスにもたまに行っていましたが、日本人のカントリー・シンガーといえばジミー時田とか宮前ユキくらいしか知りませんでした。しかし、チャーリーさんの歌を1曲聴いただけで「すごい、この人のカントリーは本物だ」と心が揺さぶられるのを感じました。哀愁を帯びた艶のある歌声で、控えめに人生を歌い上げるそのステージは最高でした。後で聞けば、かつてチャーリーさんは米軍キャンプ巡りを生業とし、日本国内のキャンプ(春日原や西戸崎にも来ていたそうです)はもちろん、フィリピンやベトナムでも演奏し、米軍兵たちの心を鷲づかみにして米国で有名になっていったそうですが、納得です。また、気さくで優しい人で、演奏が終わるとテーブルを回って客の話し相手もしてくれます。英語はまるでネイティブですが、日本語はバリバリの熊本弁で、人生経験がとてつもなく豊富なので話も面白い。ついつい時間が経つのを忘れてしまいます。それ以来、熊本に行く時は必ずこの店に寄るようになりました。チャーリーさんは記憶力もすごい。2回目に行った時には「この前はテニス・ウェアで来とらしたですね」、3回目には「今日は福岡からドクター楢崎が来てくれとります」。よく覚えられるものだ。
 チャーリーさんは毎年米国でもツアーをしています。彼のカントリー・ミュージックへの功績は本場米国で高く評価されており、何と33を数える州で名誉州民になっています。クリントン大統領時代には大統領主催の晩餐会に招待されたこともあり、時の首相小渕さんにクリントンが「This is Charlie Nagatani, a famous country muscian」と紹介したそうです。また、日本人ではただ一人カントリー&ウェスタンの殿堂入りしています。つまり、日本よりも本場米国で有名な、すごい人なのです。
 今回のコンサートに関して、チャーリーさんには、①動き回るこどももいると思いますが我慢してください、②こどもたちも聞いたことがあるような曲もお願いします、③スタッフがカントリーダンスをする予定ですが、こどもたちも乗ってきたら大成功です、④親子でほのぼの、アットホームな雰囲気をチャーリーさんたちにも楽しんでもらえたら最高です、とクマさんの気持ちを伝えています。みんなで楽しんで、チャーリーさんを喜ばそう!

(2009年2月1日)

クマさんの、いい休日過ごそう 〜門司港レトロタウンの巻〜

 クマさんも寅さんも門司港レトロタウンがお気に入りです。いつも2人で行くのですが、孫の麟君を連れて行ったこともあります。足はJRで、読書をしながら、約1時間の移動です。
 到着するとまず出光美術館に行きます。東洋美術の魅力を知ったのはそんなに昔ではありませんが、浮世絵の葛飾北斎、陶芸家の板谷波山は日本が世界に誇る天才芸術家だと思っています。その波山の作品に初めて巡り合ったのが、この出光美術館なのです。内からにじみ出る淡い光を放つ波山の作品は、薄暗い展示室で僕の心を一瞬でとらえました。凛とした器の姿と色、絵付けした西洋風の意匠も素晴らしく、無国籍の普遍美、類のない造形美だと思いました。クマさんは波山作品との遭遇に歓喜し、いろいろ調べましたが、出光興産創業者の出光佐三が、生活に困窮しながらも少しでも納得のいかない作品はすべてたたき壊し続けた波山のパトロンとなり、作品を買い取ったそうです。というわけで、出光美術館には、展示会のテーマとは無関係に、コレクションの波山作品が時々少しずつ展示してあるのです。それを楽しむのが最大の目的です。もちろん、毎回のテーマ展も面白いですよ。北斎も大好きでわざわざ上野の美術館まで行ったくらいですが、絵の前に3列も人が並び「止まらないでください」の指示でトコロテン式に移動させられたので、人が多すぎる東京の美術館には二度と行かないと決心するきっかけになりました。それに比べ、門司港の出光美術館ではゆっくり作品を楽しめます。源氏物語や平家物語に詳しい寅さんの解説を聞きながら絵巻を見るのも、「いとおかし」です。
 門司港でこどもを連れて行くなら、断然九州鉄道記念館です。引退したSLや寝台特急など実物の列車が展示してあり、乗ったりさわったりできます。すごい鉄道模型や運転シミュレータもあります。また、ミニ新幹線・電車に乗って遊ぶこともできます。鉄道の歴史を学ぶ場所でもあるので、大きいお子さん、大人まで楽しめると思います。爽快な連絡船に乗れば約10分で下関ですから、いろんな種類のフグを見れる水族館「海響館」に行くのも楽しいですね。麟君はJR電車に乗り、ミニ新幹線に乗り、連絡船に乗って海峡を航行するタンカーや貨物船まで見て、大喜びでした。こどもは乗り物が大好きですからね。
 昼ご飯には、いろんなレパートリーがあります。門司港名物のハヤシライスや焼きカレー、ふぐ料理、それにうまい地ビールもありますよ。下関の唐戸市場もすぐなので、おいしい魚介類もいろいろ食べられます。天気のいい日は桟橋に腰かけて、関門橋や海峡を行き交う船を見ながら、食事するのも気持ちいいです。
 食後は、門司港界隈をぶらぶら。ショッピングモールには掘り出しものが結構あります。NCCにはここで買ったものが少なくありません。クリスマスまで中庭を飾っていたサンタ・エクスプレスもそうです。また、最近門司港商店街の中に古書店を見つけました。だいぶ前に買い損ねた科学書と古典落語全集を格安で手に入れ、ウッシッシです。帰りの電車では心地よい疲れでうたた寝できるのも、休日ならではの至福の時間です。
 というわけで、良いものを見て、たくさん歩いて、おいしいものを楽しんで、門司港はとっても素敵な場所です。いい休日でリフレッシュして、明日からの診療も頑張るぞ!
(2008年11月26日)

病児保育室ぞうさんの家
診療・健診・ワクチン接種 インターネット予約

ネット問診票はこちら

●診療時間

時間
9:00〜12:00-
13:30〜15:00---
15:00〜18:00---

月間診療スケジュール

受付時間 8:00〜12:00/13:30〜17:00
13:30から15:00の間はワクチン接種・健康診断のみを行っております。

初めてお越しの方へ

●所在地
〒811-0202 福岡市東区和白5-7-16

当院までのアクセス

スタッフ募集
管理栄養士による栄養相談
診療券は大事な情報